〈実験〉有機合成化学・染色化学
それでは早速アゾ染料・オレンジⅡを合成し、布を染色してみましょう。
※注意
スルファニル酸は眼刺激性を有します。2-ナフトールは経皮吸収性・粘膜刺激性を有します。亜硝酸ナトリウムは皮膚粘膜刺激性を有します。塩酸は皮膚粘膜刺激性・腐食性を有します。水酸化ナトリウムは強塩基性で皮膚粘膜腐食性を有します。いずれの試薬も薬傷、失明の危険性があり、重篤な事故につながる恐れがあります。安易な真似は控えてください。
実験者は白衣、保護眼鏡、手袋を着用し、必要に応じて局所排気設備を使用しています。
〜材料〜
・スルファニル酸
・2-ナフトール
・亜硝酸ナトリウム
・濃塩酸
・濃硫酸
・水酸化ナトリウム
・炭酸ナトリウム
・塩化ナトリウム
・エタノール
・純水
・木綿布
〜器具・装置〜
・ビーカー
・駒込ピペット
・試験管
・氷浴
・ブフナー漏斗
・吸引ろ過瓶
・水流式アスピレーター
・ウォーターバス
・乾燥機
・局所排気設備
①スルファニル酸2.9gと炭酸ナトリウム0.9gを水35mlに溶かす。
②亜硝酸ナトリウム1.3gを試験管にとり、水5mlに溶かす。
③10%水酸化ナトリウム水溶液14mlに2-ナフトール2.4gを溶かす。
④①〜③の水溶液を氷浴で冷却する。
⑤氷を数個入れたビーカーに濃塩酸4mlを入れる。氷浴で冷却しながら①の溶液を加える。
⑥攪拌しながら②の液を駒込ピペットで少しずつ加えていく。ジアゾ化が完了する。
⑦③の液に⑥の液を攪拌しながら加えていく。赤橙色の沈殿が得られる。
⑧80℃のウォーターバスで加温して塩化ナトリウム7.0gを少しずつ加えて塩析する。
⑨15分ほど氷浴で冷却する。
⑩沈殿を吸引ろ過で回収し、塩化ナトリウム水溶液で洗浄する。その後少量の冷水で洗浄する。
⑪乾燥機で十分に乾燥させ、赤色粉末を得る。収率は84.7%であった。
⑫得られたオレンジⅡを薬さじの小さじ3杯分ビーカーに採り、水100mlを加える。さらに塩化ナトリウム3.0gと3.0mol/L希硫酸1mlを加える。
⑬ウォーターバスで60℃に加温し、水で湿らせた木綿を浸して5分間染色する。
⑭取り出した木綿をよく水洗いし、乾燥させる。
⑮コロナ休校で潰れてしまった実習の内容だったので記念に支給された布マスクも染めてみました。
今回調整した2液を混合するだけという簡単な操作だけで鮮やかに染色できる合成染料を作ることができました。ずっと前からやってみたかった実験なだけあって喜びもひとしおです。
それでは次回の記事までさよなラジカル。
えざお

化学部・バイオ部のおうちラボケミスト兼バイオハッカー見習い。まだまだ勉強中の青二才。高校は環境分析化学専攻卒、大学は薬学部創薬科学科在中。有機合成化学が好き。化合物合成系の記事が多めなのは目的物をコレクションしたいから。アングラめな尖り化学担当。